日吉

周りの光景は当時と全く変わってしまっていたが
一生忘れえぬ想い出がある道
一歩一歩踏み出す足が震える
先に進むとまた息が出来なくなるのは解っているのに

38号線より想い出広場に至る道路を駐車場より更に奥へ45年振り位に意を決して歩いてみた

タイムトンネルを背にすると
元の姿を想い出せない建物の残骸
建物が在った事自体憶えていない
                            ↓

冬が来るたび
雪の重さに耐えかねて
圧し潰されてゆく

私のタイムトンネル
相変わらず靴は泥だらけになる
6月の中旬は既に草の丈も伸びて
階段も苦労した

この辺りに
保育園が在ったとの事
全く記憶にない
当時
眼にしたはずなのに
自分に余裕が無かった
という事

数十年前
このテレビはどんな番組を映していたのか
このステレオはどんな音楽を鳴らしていたのか
この台所でどんな料理を作っていたのか
どんな家族がどんな生活をしどんなドラマがあったのか

人が住まなくなった家は
急激に傷んでゆく

何時の物なのかさえ
判別できない

その長屋が
取り壊されて
既に
40年の刻が
流れている
ハッキリした
場所が判らない

入りやすくなった藪の中へ分け入る、かつて何度も来た場所へ

観光シーズンが終わった初冬
訪れる人もまばらになった
観光地化した日吉が本来の静寂に戻りつつある

多くの地域が地名ごと消失してしまってる夕張
住んでいる方が存在する限り大丈夫と想うけど
刻の流れに埋もれてしまわない事を毎回祈ります

想い出広場は
初夏の陽を浴び
明るく輝いて視える
しかし更に上に登ると
情景は一変する
閉山の現実がそこには在る

基幹産業を失い、破綻した街の哀しい姿
生まれ育った真谷地は
その遺構さえ自然に埋もれてしまったが
日吉には未だ視る事が出来る。
絶対忘れてはいけない景色
記憶だけじゃなく記録としても
残したいと強く想った

柔らかいぬくもりと薫りが一瞬感じた気がした

何時から在るかは判らない

夕張鉄道路線跡と若菜駅跡
初めてタイムトンネルの上に上がってみた

この木を見る度に
懐かしさを感じる

最後まで登る事を諦めた階段

錆が更に深くなった様な気がする

今回は
高校時代に通った事のない場所にも
足を向けてみた

数世帯だが残っているのは
正直嬉しい
厳しいけど残って欲しい

初冬、陽が落ちるのが早い、夕陽に染まりだした

長屋が整然と建ち並ぶ姿が薄っすらと視える

なんとか堪えられる様になったけど、
やはり、胸が苦しく呼吸困難になる
暫くしゃがみ込む事が頻繁に起こる
ここに来ると苦しくなる事は解ってるけど
来ずにはいられず、
またこの地に立ってしまった。
夕張に入って真っ先にここに来て
車から降りてしまう

2023年6月

今まで知らなかった光景